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Q36.個人事業主・中小企業が使える賃上げ促進税制

みなさまこんにちは。高須賀会計事務所です。
本日は「Q36.個人事業主・中小企業が使える賃上げ促進税制」というテーマです。
当期に従業員に支払った給料が、前期と比べて一定割合増加した場合には税額控除できる制度があります。
この制度は「賃上げ促進税制」と呼ばれ、法人・個人事業主において利用することができます。
令和4年の税制改正により、使い勝手がよくなり税額控除額も増加しております。
本制度は、大企業(資本金1億円超等)向けの制度もありますが、今回は中小企業向けについての解説します。

1.賃上げ促進税制の概要

(1)適用要件の概要

中小企業向けの賃上げ促進税制を適用するための要件は以下の通りです。
① 青色申告書を提出している中小企業者等である
② 国内雇用者に給与等を支給している
③ 前年度と比べ給与等支給総額を1.5%以上増加させている

これら要件を満たすと、原則、給与等支給増加額の15%を税額から控除できます。
(控除を受けるためには確定申告書に明細書を添付しなければなりません。)

(2) 中小企業者について

中小企業者とは以下に該当する会社のことです。
① 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
但し、以下の法人は除きます。
前3事業年度の所得金額の平均が15億円超の法人
ー同一の大規模法人(資本金の額等が1億円超の法人等)から1/2以上の出資を受ける法人
-2以上の大規模法人から2/3以上の出資を受ける法人は除く
② 資本又は出資を有しない法人で、常時使用従業員数が1,000名以下の法人
但し、以下の法人は除きます。
前3事業年度の所得金額の平均が15億円超の法人
③ 常時使用従業員数が1,000名以下の個人事業主
④ 協同組合等

(3)適用期間

2022年4月1日から2024年3月31日までに開始する各事業年度
(個人事業主は令和5年分以降)

2. 適用要件の詳細

 当期の雇用者給与等支給額 ≧ 前期の雇用者給与等支給額×101.5% 

尚、設立初年度や開業初年度は、前期がありませんので、適用できません。
また前年の給与等支給額がゼロの場合も適用することはできません。

雇用者とは

パート、アルバイト、日雇い労働者を含みます。一方で使用人兼務役員を含む役員及びその特殊関係者、個人事業主の特殊関係者は含まれません。
中途入社や退職者も含みます。

給与等支給額とは

国内雇用者に対して支給する給与・賃金・賞与等で、損金算入される金額を言います。
退職金は含まれません。
非課税通勤交通費は、原則含みますが、含めなくても良いとされています(任意)。

3. 税額控除額

(1) 原則15%

(当期の雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)×15%
但し、調整雇用者給与等支給増加額(雇用調整助成金等を控除した雇用者給与等支給額での増加額)が上限です。

(2)上乗せ要件

以下の要件どちらかを満たせば、税額控除割合が上乗せされます。
上乗せ要件1 税額控除率15%上乗せ
雇用者給与等支給額が前年度から2.5%以上増加
上乗せ要件2 税額控除率10%上乗せ
当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費×110%

併用も可能となっており、最大40%(原則15%+上乗せ①15%+上乗せ②10%)の税額控除になります。

(3) 上限

当期の法人税額(個人事業主の場合は事業所得にかかる所得税額)の20%が限度です。

4. 雇用調整助成金等の取扱い

雇用調整助成金等については、適用要件判定時は、「給与等支給額」から控除しなくてよいこととなっています。
しかし、税額控除額を計算する際の給与等支給額の増加額の算出については、雇用調整助成金を控除して計算しなければなりません。雇用調整助成金等とは、雇用調整助成金、産業雇用安定助成金又は緊急雇用安定助成金の額をさします。これらに上乗せして支給される助成金も含まれます。

5. 教育訓練費とは

教育訓練費は、「国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用」です。

(1) 該当するもの

・他の者に委託する教育訓練等費用
研修委託費・講師人件費・施設使用料等の委託費用
100%子会社への委託料も含みます。

・他の者が行う教育訓練等に参加させる費用
外部研修参加費・WEB研修も含む
但し、法人が社員に支払う報奨金は認められない

(2) 該当しないもの

・使用人等に支払う教育訓練中の人件費・交通費
・自社役員等を講師として教育訓練を行った際の人件費等
・会社の研修施設等の取得等に要する費用・修繕費用・光熱費
・教材の購入・製作に要する費用

(3) 前期の教育訓練費ゼロでも適用可能

教育訓練費については、前期の費用がゼロであっても、当期に支出があれば適用可能となります。

設例

法人3月決算、中業企業者に該当
2025年3月期の法人税額100万円

前事業年度
2024年3月期
当事業年度
2025年3月期
給与賞与年間支給額
(内、役員報酬)
1,000万円
(300万円)
1,200万円
(400万円)
雇用者給与 ①700万円 ②800万円
教育訓練費 ③100万円 ④120万円

通常要件
②800万円÷①700万円=114.2% ∴1.5%以上増加 通常要件の15%適用
上乗せ要件1
②800万円÷①700万円=114.2% ∴2.5%以上増加 上乗せ要件1の15%適用
上乗せ要件2
④120万円÷③100万円=120%  ∴10%以上増加 上乗せ要件2の10%適用

⇒最大の控除割合である40%が適用される

(800万円-700万円)×40%=40万円

上限

100万円×20%=20万円

∴20万円の税額控除となる。

本日の内容は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございます。

 

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