Q30.受取配当金は益金に入れなくても良いのですか?
みなさまこんにちは。高須賀会計事務所です。
本日は「Q30.受取配当金は益金に入れなくても良いのですか?」というテーマです。
経理担当者向けのお話となります。
株式会社等の法人が他の会社に出資をすると配当金を受取ることがあります。
この配当金に対して課税をすると二重課税になりますので、配当金を受取った側では益金に算入しなくても良いという規程があります。
「受取配当等の益金不算入」と言ったりするのですが、今回は本制度について解説をしたいと思います。
設例
以下の設例にて受取配当等の益金不算入について解説します。
P社はS社に対して100%出資をしている。(P社は親会社、S社は子会社)
S社の当期所得は10,000円で法人税を2,320円納税した。
税引後の利益7,680円をP社に対して配当を行った。
論点 P社は配当金7,680円を受け取っているが法人税は課税されるか?
解説
P社が受け取った7,680円は会計上は収益に計上されます。
(借)現金預金7,680円(貸)受取配当金7,680円
ですが、この受取配当金に対してそのまま課税すると二重課税となってしまいます。
なぜなら、S社が法人税2,320円を既に納税しているからです。
この配当金7,680円は単に子会社から親会社へ資金が移動しているだけで、グループ全体で考えた場合、既に納税済みです。
親会社P社で再度課税することは、適切ではありません。
そのため親会社P社では受取配当金を益金に算入しなくても良いこととなっているのです。
税務調整 受取配当等の益金不算入 7,680円(減算)
このように受取配当金については、益金に算入しなくて良いのですが、出資内容によって、益金不算入にする割合が異なります。
具体的には出資を次の4つに区分して計算が行われます。
4つの区分
出資の内容 | 益金不算入の割合 |
①完全子法人株式 | 受取配当金の100%(全額) |
②関連法人株式 | 受取配当金の100%(全額)から控除負債利子を控除した金額 |
③その他の株式 | 受取配当金の50% |
④非支配目的株式 | 受取配当金の20% |
4つの区分について、定義は以下の通りです。
①完全子法人株式とは
完全子法人株式とは、配当金の計算期間を通じて100%の完全支配関係がある、他の内国法人の株式。(100%子会社のこと)
*計算期間とは直前支払われた配当の基準日の翌日からその支払を受ける配当の額に係る基準日までの期間のことである。(最大1年)
*期末配当の基準日は配当を行う法人の決算日となる。
*年1度の期末配当を行う法人は、計算期間と事業年度が一致する。
②関連法人株式とは
他の内国法人の発行済み株式の1/3超を、配当等の前に最後された配当等の基準日等の翌日*から配当等の額に係る基準日まで引き続き保有している、当該他の内国法人の株式。
*翌日が配当の基準日から起算して6カ月前の日以前である場合にはその6月前の日の翌日となる。
④非支配目的株式とは
内国法人が他の内国法人の発行済株式等の5%以下を、配当基準日に有する場合における、当該他の内国法人の株式。
③その他株式
その他株式は①、②、④に該当しない株式となります。
益金不算入の対象となる配当、対象とならない配当
益金不算入の対象となる配当は、出資者である株主としての地位に基づいて、内国法人から受ける配当金に限られます。
対象となる配当 | 対象とならない配当 | |
剰余金の配当・分配 | 株式会社の剰余金の配当 持分会社の利益の配当 協同組合等の出資分量分配金 |
外国法人から受ける配当 協同組合等の事業分量分配金 基金利息(保険会社から) 保険会社の契約者配当金 名義書換失念株の配当金 |
証券投資信託の収益分配金 (原則益金に算入) |
特定株式投資信託 (非支配目的株式に分類) |
外国株価指数連動型特定株式投資信託 |
控除負債利子
先述の通り、関連法人株式の配当については控除負債利子を加味する必要があります。
*関連法人株式等に係る負債利子控除額の見直しについて
令和4年4月1日以後に開始する事業年度より、関連法人株式等に係る配当等の額の益金不算入額から控除される負債利子の額は、その関連法人株式等に係る配当等の額の4%相当額とするとされました。ただし、その事業年度に係る支払利子等の額の10%相当額を上限とすることができます。
原則:関連法人株式の配当金の額×4%
但し、支払利子の合計額×10%≦関連法人株式の配当金の額×4% の場合
(支払利子の合計額×10%)×その配当等の額/関連法人株式等に係る配当等の額の合計額
支払利子は、受取手形の売却損を含むが、①利子税・延滞金②取得価額に含めた割賦利子③売上割引料は除きます。
以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました。