最低賃金は、毎年秋に改定されます。2026年度は、大阪府の最低賃金が10月1日から時間額1,231円に引き上げられました。前年度の1,177円から54円の引き上げです。
最低賃金の改定は、パートやアルバイトの時給だけの話だと思われがちです。しかし実際には、月給の正社員でも、時間あたりに換算すると最低賃金を下回ってしまうケースがあります。
この記事では、最低賃金の基本と、時給・月給・日給・歩合給それぞれの確認方法、賃金を引き上げるときの手続きを整理します。
この記事でわかること
- 最低賃金の対象者と、下回った場合のペナルティ
- 新しい最低賃金を適用するタイミング(締め日をまたぐ場合)
- 月給の人を時間額に換算して確認する方法と計算例
- 賃金を引き上げるときに必要な手続き
1. 最低賃金の基本
最低賃金は、最低賃金法にもとづいて国が定める賃金の最低額です。会社は、この金額以上の賃金を支払わなければなりません。使用者と労働者の間でどのような合意をしていても、この点は変わりません。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 地域別最低賃金 | 都道府県ごとに定められる最低賃金 |
| 特定最低賃金 | 特定の産業について定められる最低賃金 |
両方に当てはまる場合は、高いほうの金額が適用されます。
対象となるのは、正社員、パート、アルバイト、契約社員など、雇っているすべての労働者です。
本人と合意して最低賃金より低い時給で契約していたとしても、その部分は無効になり、最低賃金と同じ額で契約したものとみなされます。差額を支払わなかった場合、地域別最低賃金については50万円以下の罰金の対象になります。
2. 時給の人の確認と、適用のタイミング
時給で働く人は、時給の額と最低賃金をそのまま比べます。たとえば大阪府の会社で時給1,200円の人がいれば、10月1日からは1,231円を下回るため、引き上げが必要です。
給与の支払日ではなく「働いた日」が基準
新しい最低賃金は、給与の支払日ではなく、働いた日を基準に適用されます。
たとえば毎月15日締めの会社では、9月16日から10月15日までの給与に、9月の勤務と10月の勤務が混ざります。この場合は、10月1日以降に働いた分から新しい時給で計算します。
どの都道府県の最低賃金が適用されるか
- 最低賃金が新しくなる日は都道府県によって違う(多くは10月1日だが、11月や12月にずれ込む県もある)
- 適用されるのは、会社の本社ではなく、従業員が働いている事業所の都道府県の最低賃金
- 派遣社員の場合は、派遣先の都道府県の最低賃金が適用される
3. 月給の人の確認方法
月給の人は、月給を時間あたりの金額に換算して、最低賃金と比べます。
月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間(=1年間の所定労働時間 ÷ 12)
このとき、月給の全額を使うわけではありません。計算に含めるものと除くものは、次のとおりです。
| 区分 | 賃金の例 |
|---|---|
| 計算に含める | 基本給、役職手当、職務手当など |
| 計算から除く | ・残業代、休日出勤や深夜勤務の割増賃金 ・通勤手当、家族手当、精皆勤手当 ・賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 ・結婚祝金など、臨時に支払われる賃金 |
4. 月給の人の計算例
大阪府の会社で、次のような正社員がいたとします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 月給の内訳 | 基本給19万円、職務手当1万円、通勤手当1万円 |
| 1日の所定労働時間 | 8時間 |
| 年間休日 | 120日 |
| 手順 | 計算 |
|---|---|
| ① 計算に使う月給 | 通勤手当を除いた20万円 |
| ② 1年間の所定労働時間 | (365日-120日)× 8時間 = 1,960時間 |
| ③ 1か月の平均所定労働時間 | 1,960時間 ÷ 12 ≒ 163.3時間 |
| ④ 時間あたりの金額 | 20万円 ÷ 163.3時間 ≒ 1,224円 |
1,224円は、大阪府の最低賃金1,231円を下回っています。月給20万円の正社員でも、最低賃金に違反してしまうことになるのです。
逆算すると、1,231円 × 163.3時間で、計算に含める月給が約20万1,100円以上あれば最低賃金を満たします。この例では、基本給か職務手当を月1,100円以上引き上げるか、所定労働時間や休日の設定を見直す必要があります。
年間休日が多い会社や、1日の所定労働時間が長い会社ほど、時間あたりの金額は低くなります。月給の人も、改定のたびに必ず計算して確認しましょう。
5. 日給・歩合給の人の確認方法
| 給与の形 | 時間あたりの金額の求め方 |
|---|---|
| 日給 | 日給 ÷ 1日の所定労働時間(日によって違う場合は1週間の平均) |
| 歩合給 | その給与計算期間の歩合給の総額 ÷ その期間の総労働時間(残業時間も含む) |
| 基本給+歩合給 | それぞれ時間あたりの金額を計算し、合計した額を最低賃金と比べる |
歩合給は、残業時間も含めた総労働時間で割る点が、月給との違いです。
6. 賃金を引き上げるときの手続き
時給の引き上げは、従業員にとって有利な変更です。そのため、法律上、本人の同意書までは必要ありません。
ただし、賃金は労働条件として書面で明示すべき事項です。後々の確認のためにも、「労働条件変更通知書」や「賃金改定のお知らせ」といった書面を本人に渡しておくことをおすすめします。いつから、いくらからいくらに変わるのかを明記しておきます。
- 給与計算ソフトの時給の設定を更新する
- 賃金台帳の記載を更新する
- 就業規則や賃金規程に時給の表や初任給の額を定めている場合は、規程も見直す
最低賃金の改定は毎年のことです。毎年8月から9月ごろに新しい金額が発表されたら、時給の人と月給の人の両方を一覧で点検する習慣をつけておくと安心です。
まとめ
- 2026年度の大阪府の最低賃金は、10月1日から時間額1,231円
- 最低賃金はすべての労働者が対象。下回る契約は無効になり、罰則もある
- 新しい最低賃金は働いた日を基準に適用する。締め日をまたぐ場合は、10月1日以降の勤務分から新しい時給で計算する
- 月給の人は、通勤手当などを除いた月給を1か月の平均所定労働時間で割って確認する。月給20万円でも下回ることがある
- 引き上げに同意書は不要だが、変更を書面で通知しておく
最低賃金の金額や発効日は、年度や地域によって変わります。確認や手続きに迷ったときは、お気軽にご相談ください。