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COLUMN

社会保険料はいつ変わる?定時決定と随時改定のしくみ

社会保険・年金公開日 2026.09.23

この記事は2026年9月時点の法令にもとづいて書いています。その後の税制改正で取り扱いが変わっている場合があります。

毎年秋になると、給与明細を見た従業員から「保険料が変わったのはなぜですか」と聞かれたり、社会保険の決定通知書が会社に届いたりします。この変更の正体が「定時決定」です。そして、昇給したのに社会保険料がすぐ変わらない、あるいは年の途中で急に変わった――その正体が「随時改定」です。

社会保険料は、会社と従業員が半分ずつ負担する、人件費の大きな塊です。この記事では、2つのルールを順番に整理します。

この記事でわかること

  • 保険料を決める「標準報酬月額」のしくみ
  • 定時決定のルールと、4〜6月の残業が1年効く理由
  • 随時改定の3つの条件と、改定されないケース
  • 届出と資金繰りの実務の注意点

1. 保険料は「標準報酬月額」で決まる

健康保険と厚生年金の保険料は、毎月の給与の実額ではなく、「標準報酬月額」という給与のランク表に当てはめた金額に保険料率を掛けて計算します。たとえば月の報酬が29万円から31万円の人は、標準報酬月額30万円のランクです。報酬が多少変動しても、ランク(等級)が変わらない限り保険料は変わりません。

  • 報酬には、基本給だけでなく、残業代、通勤手当、役職手当など、労働の対価として毎月受けるものが広く含まれる
  • 保険料率は健康保険と厚生年金をあわせて報酬のおおむね30%。会社と本人で約15%ずつ負担するイメージ

2. 定時決定:年に1度の見直し

項目 内容
対象 従業員全員
決め方 4月・5月・6月に支払われた報酬の平均を等級表に当てはめる
届出 7月初めに算定基礎届を年金事務所に提出
適用期間 その年の9月から翌年8月まで(原則1年間)

なお、支払基礎日数が17日に満たない月は計算から外すといった細かいルールもあります。

4〜6月の残業は1年効く
報酬には残業代も含まれるため、4月から6月に繁忙期が重なって残業代が膨らんだ人は、その平均額で標準報酬月額が決まり、9月からの1年間、本人も会社も高い保険料を払い続けることになります。同じ年収でも、残業の付き方で保険料が変わります。業務の平準化や人員配置を考えるときの目線として知っておきましょう。

3. 随時改定:年の途中でも変わる3つの条件

定時決定だけだと、年の途中で大きく昇給しても翌年9月まで保険料が古いままです。そこで、次の3つの条件をすべて満たした場合は、年の途中でも標準報酬月額を改定します。会社は月額変更届を提出します。

条件 内容
① 固定的賃金の変動 基本給の昇給・降給、役職手当や住宅手当の新設・廃止、時給単価の変更など
② 2等級以上の差 変動した月から3か月間の報酬の平均が、今の標準報酬月額と比べて2等級以上離れている
③ 支払基礎日数 その3か月とも、支払基礎日数が17日以上ある

3つがそろうと、変動月から数えて4か月目に新しい標準報酬月額へ改定されます。

4. 数字でイメージ:昇給したらいつ変わるか

標準報酬月額30万円の従業員を4月に昇給させ、月の報酬が34万円になったとします。4月〜6月の平均34万円は標準報酬月額34万円のランクに当たり、30万円から2等級以上の差になります。日数の条件も満たしていれば、7月から標準報酬月額が34万円に改定されます。

報酬が4万円上がると、保険料率を約30%とすれば保険料は月およそ1万2千円の増加。会社と本人で6千円ずつの負担増です。

昇給のコストは昇給額だけではない
昇給を決めるとき、会社の負担は昇給額だけでなく、その約15%の社会保険料も一緒に増えます。給与設計の基本として持っておきたい感覚です。

5. 誤解しやすいところ:改定されないケース

ケース 理由
残業代だけが増えた 随時改定の入口は固定的賃金の変動。基本給や手当が変わっていなければ改定されない
変動が小さい 平均が1等級しか動かなければ改定されず、次の定時決定まで待つ
方向が食い違う 固定的賃金は上がったのに、残業減で報酬の平均は下がった場合などは、原則として改定の対象にならない

「昇給したのに保険料が変わらない」「残業が増えたのに変わらない」という従業員からの質問には、この3つの条件から説明すると納得してもらいやすくなります。

6. 保険料が上がるのは「損」だけか

標準報酬月額は、保険料の計算基礎であると同時に、将来の給付の計算基礎でもあります。厚生年金の年金額は現役時代の標準報酬月額の記録をもとに計算され、傷病手当金や出産手当金も標準報酬月額をもとに計算されます。

従業員に説明するときも、「負担が増える」だけでなく「将来の年金や、万一のときの給付のベースも上がる」という両面を伝えると、納得感が違います。

7. 実務の注意点

  • 届出を忘れない:算定基礎届は毎年7月の恒例行事だが、月額変更届は昇給のたびに個別に発生する。出し忘れると、後からさかのぼって保険料を追徴されることがある
  • 昇給月と資金繰り:4月昇給の場合、随時改定は7月、保険料の引き落としへの反映はさらにその後になる。人件費の増加が段階的に来ることを資金繰り表に織り込む
  • 賞与は別の仕組み:賞与には標準賞与額という別枠で保険料がかかり、支給のたびに賞与支払届を提出する

まとめ

  • 社会保険料は標準報酬月額で決まる
  • 定時決定は、4〜6月の報酬の平均で決めて9月から適用する年1回の見直し。4〜6月の残業は1年効く
  • 随時改定は、固定的賃金の変動・2等級以上の差・支払基礎日数の3つの条件がそろったときに、4か月目から改定される
  • 昇給には約15%の社会保険料の増加が伴う。給与設計と資金繰りに織り込む

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