役員社宅の賃貸料相当額(役員から徴収すべき家賃)は、小規模な住宅であれば、固定資産税の課税標準額をもとにした計算で、家賃相場の1〜2割程度に収まることが多いものです(役員社宅のコラムを参照)。
ところが、会社が所有する社宅や、小規模の基準を超える広めの借上げ社宅では、「自社所有方式」という別の計算が必要になります。この記事では、その計算式と数字例を解説します。
この記事でわかること
- 自社所有方式の計算が必要になる2つの場面
- 建物12%(または10%)+敷地6%の計算式
- 小規模住宅との負担の差
- 借上げ社宅での「支払家賃の50%」との比較
1. 自社所有方式が登場する場面
| 場面 | 賃貸料相当額 |
|---|---|
| 会社が所有する社宅を役員に貸している | 会社に家賃の支払いがないため、自社所有方式の計算額 |
| 借上げ社宅で、小規模の基準(木造132㎡・それ以外99㎡)を超える | 会社が支払う家賃の50%と、自社所有方式の計算額の、いずれか多いほう |
なお、床面積240㎡超などの「豪華社宅」は、この計算の対象外で、世間相場の家賃がそのまま基準になります。この記事は、小規模ではないが豪華でもない、中間ゾーンの住宅の話です。
2. 計算式:建物12%(または10%)+敷地6%
(建物の固定資産税の課税標準額 × 12% + 敷地の固定資産税の課税標準額 × 6%)÷ 12 = 月額の賃貸料相当額
- 建物の法定耐用年数が30年を超える場合は、12%ではなく10%を掛ける(木造は12%、鉄筋コンクリート造のマンションなどは10%が目安)
- 課税標準額は、その年度のものを使う
小規模住宅の計算の0.2%・0.22%は最初から月額を出す率ですが、自社所有方式の12%・6%は年額の率です。月額に直すと、建物は1%(10%なら約0.83%)、敷地は0.5%。小規模住宅と比べて、建物で4〜5倍、敷地で2倍強の重さです。
3. 数字で確認:鉄筋コンクリート造のマンションの例
会社が所有する鉄筋コンクリート造のマンションの一室(床面積110㎡)を役員に貸しているとします。小規模の基準99㎡を超えているので、自社所有方式で計算します。
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 建物(課税標準額1,200万円、耐用年数30年超) | 1,200万円 × 10% = 120万円 |
| 敷地(持分に対応する課税標準額900万円) | 900万円 × 6% = 54万円 |
| 年額の合計 | 174万円 |
| 月額の賃貸料相当額 | 174万円 ÷ 12 = 14万5,000円 |
同じ物件が99㎡以下で小規模住宅の計算が使えたとすると、月額はおおむね4万4,000円です(1,200万円×0.2%+12円×110㎡÷3.3㎡+900万円×0.22%)。床面積が基準を少し超えるだけで、徴収すべき家賃が3倍以上に変わることになります。社宅用の物件を選ぶときに、小規模の基準を意識すべき理由です。
4. 借上げ社宅で小規模の基準を超える場合
家賃30万円で借りた110㎡のマンションの例で考えます。
| 比較する金額 | 月額 |
|---|---|
| 支払家賃の50% | 15万円 |
| 自社所有方式の計算額(上の例と同じと仮定) | 14万5,000円 |
多いほうの15万円が、徴収すべき賃貸料相当額です。地価の高い場所で課税標準額が大きい物件では、自社所有方式の計算額のほうが多くなることもあります。どちらになるかは物件次第なので、両方を計算して比べるのが正しい手順です。
小規模の基準を超える借上げ社宅では、少なくとも家賃の半分は役員から徴収することになり、節税効果は小規模住宅に比べてかなり薄まります。広い社宅を検討するときは、この前提で損得を考えましょう。
5. 実務のポイント
- 課税標準額の資料を集める:自社所有なら毎年の固定資産税の課税明細書に記載がある。借上げ物件は、借主の立場で市区町村から固定資産評価証明を取得できる。マンションは、専有部分と敷地権の持分に対応する金額を使う
- 建物の構造を確認する:12%か10%かは、法定耐用年数が30年を超えるかどうかで決まる。登記簿や課税明細書で構造を確認する
- 小規模かどうかを判定する:マンションの共用部分は含めないなど、面積の数え方にも細かい論点がある。基準の前後にある物件は慎重に確認する
まとめ
- 自社所有方式は、(建物の課税標準額×12%〈耐用年数30年超なら10%〉+敷地×6%)÷12が月額
- 会社所有の社宅では、これがそのまま賃貸料相当額になる
- 小規模を超える借上げ社宅では、支払家賃の50%との多いほうを使う
- 小規模住宅との負担差は数倍規模。物件選びは床面積の基準も含めて試算してから決める