高須賀会計事務所 TAKASUGA CPA OFFICE 会計・税金・経営の専門家

COLUMN

役員退職金はいくらまで支給できる?功績倍率法と死亡退職金・弔慰金

法人税・役員公開日 2026.09.26

この記事は2026年9月時点の法令にもとづいて書いています。その後の税制改正で取り扱いが変わっている場合があります。

役員退職金は、経営者人生の総決算とも言える大きなお金です。会社にとっては大きな損金になり、受け取る側でも税制上の優遇があります。だからこそ、「いくらまでなら認められるのか」という質問を、本当によくいただきます。

結論から言うと、法律上、金額の上限はありません。ただし、税務上の「物差し」があります。この記事では、その物差しの中身と使い方の注意、社長に万一のことがあった場合の死亡退職金の取り扱いまで整理します。

この記事でわかること

  • 「不相当に高額」な部分が損金にならないルール
  • 功績倍率法による相当額の目安
  • 否認されやすい3つのパターン
  • 死亡退職金・弔慰金の非課税枠

1. 上限はないが「不相当に高額」な部分は損金にならない

役員退職金をいくら払うかは、株主総会の決議などを経て会社が決められ、会社法上、金額の上限はありません。しかし税務では、支払った退職金のうち「不相当に高額な部分」は損金に算入できないと定められています。

いくらからが不相当に高額なのか、法律に具体的な計算式は書かれていません。そこで実務の目安として定着しているのが、功績倍率法です。

2. 功績倍率法:実務の物差し

最終報酬月額 × 役員としての在任年数 × 功績倍率

たとえば、最終の役員報酬が月額100万円、在任20年の社長で、功績倍率を3.0とすると、100万円×20年×3.0=6,000万円が相当額の目安になります。

役職 功績倍率の相場観
社長 おおむね3.0
それ以外の役員 役職に応じて1.5〜2.5程度

ただし、この数字は絶対的な基準ではなく、同業・同規模の会社との比較で判断されます。3.0までなら必ず安全という保証ではありません。

報酬設計と退職金はセットで考える
退職金の枠は、最終報酬月額と在任年数で決まります。役員報酬を極端に低く抑えたままだと、退職金の枠も小さくなります。

3. 否認されやすい3つのパターン

パターン 内容
退職直前の報酬引き上げ 退職金を増やす目的で最後の1年だけ報酬月額を大きく上げると、引き上げ前の水準で相当額を判定される可能性がある
形だけの退職(分掌変更) 代表を退いて会長や相談役になっても、実際には経営の実権を握り続けている場合、退職の事実がないとして退職金全体が否認され、給与や賞与として扱われるリスクがある。報酬が半分未満になる、経営の主要な意思決定に関与しない、といった実態が必要
手続きの不備 株主総会の決議、役員退職金規程、議事録など、金額の根拠と決定のプロセスを書面で残していない

4. 死亡退職金:遺族に支払う場合

社長が在任中に亡くなった場合、会社側の取り扱いは生前の退職金と同じ考え方で、功績倍率法などによる相当額までが損金になります。大きく違うのは、受け取る側の税金です。

区分 受け取る側の税金
生前の退職金 本人の退職所得として所得税
死亡退職金(死亡後3年以内に支給が確定したもの) 遺族の相続税

死亡退職金には、500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。相続人が配偶者と子2人の3人なら、1,500万円までは相続税がかかりません。この枠は、生命保険金の非課税枠(同じく500万円×法定相続人の数)とは別枠で使えます。

5. 弔慰金という、もう1つの枠

会社が遺族に支払う弔慰金は、一定額までは相続税の対象にならないものとして扱われます。

死亡の原因 非課税となる弔慰金の目安
業務上の死亡 死亡時の普通給与の3年分
業務上以外の死亡 死亡時の普通給与の半年分

超えた部分は死亡退職金として扱われ、500万円×法定相続人の数の枠に合流します。遺族への支給は、弔慰金・死亡退職金・生命保険金の3段構えで設計できます。

受取人を規程で定めておく
死亡退職金の受取人を役員退職金規程で定めておけば、原則として遺産分割の対象外にできます。遺族の生活資金を、相続争いから切り離して確実に届けることができます。

6. 実務の準備:3点セット

  • 役員退職金規程の整備:功績倍率法による計算式、功労加算の上限、死亡退職金と弔慰金の定め、受取人の指定まで入れておく
  • 財源の準備:生命保険や共済、計画的な内部留保など、支給時期から逆算して資金を準備する。いつ必要になるか分からない死亡退職金は、保険との相性が良い
  • 報酬と在任年数の記録:役員報酬の推移や就任時期を、議事録とともに残しておく

まとめ

  • 役員退職金に法律上の上限はないが、税務は「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」で相当額を見る
  • 直前の報酬引き上げ、実態のない退職、手続きの不備は否認の定番
  • 死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金は相続税の対象。500万円×法定相続人の数の非課税枠が、生命保険とは別に使える
  • 弔慰金の非課税枠も加えて、規程と財源を早めに準備する

関連するコラム

コラム一覧へ →